
なぜ無機顔料は肌から退色するのか?(パート1)
代謝の影響
無機顔料は、有機顔料に比べて体内で代謝される速度が早いため、退色しやすいのです。
このプロセス全体は、いわゆる「色素の排出(pigment fallout)」と呼ばれ、人体内の酸化還元反応(レドックス反応)に関係しています。
簡単に言えば、「トランスフェリン」というタンパク質(卵のたんぱく質ではありません)が色素粒子をキャッチし、その一部を血流に取り込ませようとしつつ、残りは体外に自然排出しようとするのです。
無機顔料は「鉄」である
無機顔料、つまり鉄は、生体にとって必要不可欠な化学元素=生体由来物質であるため、こうした体内プロセスに積極的に関与します。
具体的には以下のような流れになります:
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色素が皮膚下に注入される
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酸化還元反応がすぐに始まる
反応速度は非常に速いですが、大量の色素が一度に入るため、退色は徐々に進行します -
色素は、最終的に可溶性の塩(調理用の塩ではありません)へと変化します
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一部の色素は、赤色骨髄を通じてトランスフェリンにより変換され、赤血球が生成されます
つまり、色素が血流に取り込まれるということです -
残りの色素(可溶性塩)は、肝臓や脾臓といった体内のフィルターを通過します
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最後に、腸や腎臓を経由して自然に体外へ排出されます
このプロセス全体には約1年から1年半程度かかります(人によってはそれ以上、またはそれ以下の場合もあります)。
この退色スピードは、その人の体質や代謝の安定性/不安定性によって大きく左右されます。